25.離さない

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 無意識に溜め息を落とした私に、「花々里(かがり)さん、(わたくし)頼綱(よりつな)坊っちゃまからお聞きしたんでございますよ? 昨晩、とうとう坊っちゃまからのプロポーズをお受けになられたんでございましょう!? おめでとうございます!」とにっこりされる。  だから、坊っちゃまの許嫁(いいなずけ)である花々里さん(あなた)に対して、(わたくし)がアレコレお世話を焼くのは当たり前のことなのでございます、と言いたげな八千代さんに、私は瞳を見開いた。 「で、でもっ」  頼綱とは今後のことについてまだ何も話していないし、八千代さんにそこまでして頂く義理はまだ私にはないのですっ。  そう言い募ろうとしたところで、頼綱が私の背後にやってきて。 「花々里。さっき、八千代さんからも頼まれたし、今日は俺が愛するキミを学校まで送っていくからね?」  とか言って、話をややこしくするの。  空気を読まないのほほんとした頼綱(よりつな)の口調に、思わず責めるような気持ちを込めて、振り返りざま彼を睨みつけたら、「ん? どうしたの? 八千代さんと何かあったかね?」とか!  八千代さんと、というより貴方と!なんですけどっ。  そんな思いで、「何で私に無断で八千代さんに話しちゃったんですかっ」と頼綱に詰め寄ったら、「まずいことなんて何ひとつないと思うけど?」とキョトンとされた。  まずいと言うより、私の気持ちの整理の問題なのに!と思うこちらの心情なんて知らぬげに、澄ました顔で頼綱が続ける。
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