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無意識に溜め息を落とした私に、「花々里さん、私、頼綱坊っちゃまからお聞きしたんでございますよ? 昨晩、とうとう坊っちゃまからのプロポーズをお受けになられたんでございましょう!? おめでとうございます!」とにっこりされる。
だから、坊っちゃまの許嫁である花々里さんに対して、私がアレコレお世話を焼くのは当たり前のことなのでございます、と言いたげな八千代さんに、私は瞳を見開いた。
「で、でもっ」
頼綱とは今後のことについてまだ何も話していないし、八千代さんにそこまでして頂く義理はまだ私にはないのですっ。
そう言い募ろうとしたところで、頼綱が私の背後にやってきて。
「花々里。さっき、八千代さんからも頼まれたし、今日は俺が愛するキミを学校まで送っていくからね?」
とか言って、話をややこしくするの。
空気を読まないのほほんとした頼綱の口調に、思わず責めるような気持ちを込めて、振り返りざま彼を睨みつけたら、「ん? どうしたの? 八千代さんと何かあったかね?」とか!
八千代さんと、というより貴方と!なんですけどっ。
そんな思いで、「何で私に無断で八千代さんに話しちゃったんですかっ」と頼綱に詰め寄ったら、「まずいことなんて何ひとつないと思うけど?」とキョトンとされた。
まずいと言うより、私の気持ちの整理の問題なのに!と思うこちらの心情なんて知らぬげに、澄ました顔で頼綱が続ける。
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