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「あのっ、頼綱。……い、一応寛道に連絡しても……いい?」
まさか昨日あんなことがあって……いつもの場所で私のことを待っていてくれるとは思わないけれど、万が一があってはいけない。
そう思って恐る恐るスマートフォンを手に頼綱を見つめたら、案外すんなり「構わんよ」と言ってくれた。
昨日の今日で気まずさマックスな私としては、寛道に電話なんてかけたくないんだけど、じゃあメールがチャカチャカ打てるかと聞かれたら無理なわけで。
今までのガラケーなら割と手元を見ずにアレコレ打てていたのに、スマートフォンの画面を撫で回すフリック入力とやらはどうにも慣れなくていけない。
小町ちゃんはするすると滑らかに画面上に指を走らせて、いとも簡単に長文を完成させてしまうけれど、私もいつかあんな風に打てるようになれるのかしら。
散々悩んで、私は寛道へのメール画面にごくごく短い文面を打ち込んだ。
まだ車を発進させていない頼綱が、横からちらりと画面を覗き込んで、「電報でも打ったのかい?」と聞いてくる。
「ち、違っ」
言ってはみたものの、送信済み画面に表示された内容は『キョウクルマ。ムカエフヨウ』とかいう文面で、我ながら溜め息がこぼれる。
だって、なんか知らないけど単略化した文面を変換しようとしたら、全部カタカナになっちゃったんだもんっ!
〝村陰様はお若いからすぐに慣れますよ〟ってショップ店員さんは微笑んでくださったけれど、ホントかな?
今日大学に行ったら、小町ちゃんに色々習おうって思った。
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