25.離さない

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「やぁ花々里(かがり)の幼馴染みくん。いま花々里(うちの子)を大学まで送って行くところなんだけど、ついでだしキミも乗っていくかね?」  ここ数日私を待っていてくれた場所で、今朝も寛道(ひろみち)を決め込んでいた。  今日も一緒に行ってやるとか、待ってるからな?とか……そんな連絡、入ってなかったよね?  一瞬不安になったけれど、さっきまで見つめていたスマホにはそんなのきていなかったはず。  じゃあ、もしも私が連絡しなかったら……。  そうして頼綱(よりつな)が敢えてここを通る時、寛道に気付かないふりをしてスルーしていたら……。  彼はどうなっていたんだろう。  あんなに私と接触させることを嫌がっていたはずの寛道を、頼綱が愛車に乗せようとしていることに、私はかなり驚いた。  寛道に声を掛けるなり、頼綱は集中ドアロックを解除して、視線だけで「どうぞ」と車に乗り込むことを誘い掛けて。 「――これって何かの罠じゃないよな?」  寛道がそう思ったのも無理はない。  だって私も頼綱の言動にびっくりしているところだもの。  警戒しながらも、寛道が後部ドアを開けて乗り込んでくる。 「花々里、キミも後ろへ行きなさい」  ややして、頼綱が小さく吐息を落とすと、私にも信じ難いことを(うなが)してきた。  いつもの頼綱からは到底出ないだろう言葉に、私は瞳を見開いて固まってしまう。  頼綱は、ハンドルを握る手に一瞬だけ力を込めると、私に覆い被さるようにしてシートベルトを外してくれて。  そのまま私の耳に、「逃げてばかりじゃ、前には進めないよ?」とささやきかけた。
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