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ご主人様……もとい、御神本さんからのゴーサインに、私は生唾をごくりと飲み込む。
さっきうなぎをたらふく食べたけれど、私、甘いものは別腹なのっ。
わーい! 羊羹!!
ツヤッツヤですっごく綺麗っ!
茶器の横、小さなお皿に切り分けられて載せられた、みずみずしいお色の“元祖黒田千年堂”の清水羊羹。
どうやらこれ、島根県の方の銘菓らしい。
御神本さんによると、端っこは砂糖を吹いてて、私がさっき言ったようなジャリジャリした食感が味わえるんだとか。
蘇芳に近い、暗めの小豆色がたまらなく上品で美しいなって思ったの。
けど……さすがにお客さん用だからって、さっきのお婆さんが気を遣ってくださったのかな?
私の割り当て分は端っこじゃなくて……お砂糖ジャリリは味わえそうになくて残念です。
あ。そうだ。
帰りに御神本さんにお願いして、ジャリジャリ感が味わえる端っこ、包んでもらうとかありかな。
そうすれば、入院中のお母さんにも食べさせてあげられるし。
勝手に見知らぬ家に連れて来られたんだもんっ。
そのくらいのワガママ言っても、罰なんて当たらないよね?
それにほら。両サイドを落として真ん中を!って言うのより、庶民らしく奥ゆかしくて?言いやすい気がするの。
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