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「……お、はよう」
何から話したらいいのか分からなくて、とりあえず挨拶から入ってみたり。
「はよ」
恐る恐る助手席側後部シートの端っこにちょこんと腰掛けて扉を閉めたら、寛道がそう言って私をじっと見つめてきて。
何となく前方を見据えたまま寛道の方を向くことが出来ない私は、横顔に穴があきそうな錯覚を覚える。
「その……昨日は悪かったな。お前の手、振り払ったりして」
いきなり本題に突入してくる辺りが寛道らしい。
だけどお願い、もう少しクッションをっ。
心の準備が出来ていなかった私は、そわそわしながら、「あ、あのっ、それ、お、お互い様……だから」と途切れ途切れに返した。
そう。そもそも最初に寛道の手を拒絶したのは私。
そのくせ寛道から同じようにされて、ショックのあまり居た堪れなくなって逃げ出しちゃうとか……。
ワガママにも程があるよね。
「あ、のね、寛道。昨日……何で怒ったのか……聞いても……いい?」
私の手を振り払った時、寛道は確かに怒りに震えていた。
私はそんな寛道を見たことがなかったの。
いつまでも――。
例えばお互いに彼氏や彼女が出来たとしても。
私たちはずっとずっと仲の良い幼馴染みのままでいられると思っていた。
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