25.離さない

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「あ、あのね……寛道(ひろみち)。もうひとつだけ……教えて?」  頼綱(よりつな)にだって、私たちの会話は聞こえているはずなのに、今日の彼は不自然すぎるぐらい介入してこない。  ――きっと私たちが2人でじっくり話すことが大事だって、我慢してくれてる。  そう思った私は、一生懸命言葉を選びながら寛道との会話を続けた。 「ひとつと言わずいくつでも聞けよ。何でも答えてやるよ」  今日の寛道はとっても寛大だ。  私は小さく息を吐き出すと、頑張って寛道の方をちゃんと向いて。  そうして彼の目を見ながら言ったの。 「ち、違ってたらごめんね。えっと、寛道は……わ、私のこと、……もしかして……その……す、好き……だったり、する、のかな?」  しどろもどろになりながらも思い切って口に出してはみたものの、答えを聞くのが物凄く怖い。  バーカ。なに自惚(うぬぼ)れてんだよ、って言ってくれたら……。  馬鹿な勘違いしたなって。  恥ずかしく思いながらもきっとホッと出来る。  そう思ったのだけれど――。 「今更それ聞く? 俺、お前のお袋さんの前でもちゃんと言ったし、それ以外でも結構ガンガン意思表示してきたつもりなんだけど……。伝わってなかったのかよ」  溜め息混じりに告げられた言葉に、私は瞳を見開いた。  イエスともノーとも言ってはくれないけれど、この流れからすると……きっと。
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