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「好きだよ。――子供の頃からずっと」
ややして、寛道が私の手をギュッと握って真剣な顔をしてそう言ったから。
私は「ああ、やっぱり」って落胆してしまった。
ごめんね、寛道。
好きだって言われて、そんな風に感じてしまう自分がすごく嫌だ。
どうして私のことを好きになったりしたの?って、恨みがましく問いかけてしまそうな無神経な自分を呪いたくなる。
私は寛道のことを幼馴染み以上とも以下とも思ったことがなかったから。
だからその関係をダメにしてしまいそうな寛道の感情が本気で憎らしくて――。
それと同時に、どうして私、寛道を好きになれなかったんだろうって思った。
「花々里。お前は――」
寛道が、私の手を握る手に気持ち力を込めてきて。
私は運転に集中しているふりをしている頼綱にちらりと視線を投げかける。
「ごめん、寛道。私、貴方の気持ちには……応えられない」
寛道の手を、握られていない方の手でそっと外しながら、一生懸命言葉を紡ぐ。
「あのね、寛道。私、頼綱のことが……好きなの。多分……出会った瞬間から……ずっと」
それは、頼綱自身にですら面と向かって告げてはいない言葉。
私が寛道にそう告げた瞬間、今までポーカーフェイスを決め込んでいた頼綱が、一瞬ピクリと肩を震わせたのが分かった。
私はそれを見て、にわかに恥ずかしくなる。
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