25.離さない

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 私、絶対いま不細工な顔になってる。  そう思って慌ててうつむいて、ドアに手をかけたままこめかみを押さえたら、 「花々里(かがり)、今朝から時折眉をしかめているけど……頭が痛いんじゃないかね?」  って頼綱(よりつな)が聞いてきた。  一旦は車外に出た寛道(ひろみち)が、それを聞くなり不安そうな顔で車に張り付いたけれど。 「大……丈夫、だよ」  ――痛いけど我慢できないほどじゃないから。  そう心の中でそっと付け加えながら、「行ってきます」と頼綱に告げる。  そのままドアを開けようとしたら、頼綱が小さく舌打ちする声がして。  それと同時に集中ドアロックがかけられた。 「……頼、綱?」  突如開けられなくなった扉に戸惑いながら、ミラー越しに頼綱を非難がましい目で見つめたら、 「明らかに具合いが悪そうなフィアンセを看過することなんて、には出来ないんだけどね?」  って怖い顔をされた。  そんな私たちの様子に、寛道が車外から窓ガラスをドンドン叩いてきたけれど、頼綱(よりつな)は「花々里(かがり)の調子が(かんば)しくない。今日はこのまま連れて帰るから」とだけ言って、車を発進させてしまった。  閉まりつつある運転席パワーウインドウの隙間から、寛道の「花々里!」って声が聞こえて来たけれど、私は再度襲ってきた痛みに、小さく吐息を落とすことしかできなくて。  ――寛道、ごめん。小町(こまち)ちゃんに今日もお休みになりそうって伝えて。  言いたい言葉がひとつも(つむ)げないままに、大学がどんどん遠ざかって行った。
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