26.この味、覚えてる!

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***  部屋に入ると、八千代さんが寝床を整え終えたところで。 「せっかくお弁当を用意していただいたのにこんなことになってすみません……」  布団の上、半身起こした状態でしょげたら、「お弁当はお家でも食べられますから大丈夫でございますよ」と笑ってくださった。 「朝もいつもに比べてあまり召し上がられていないようでしたし、もし小腹が空いたら――」  そこで「ちょっと失礼しますね」と、机に置いていたお弁当の包みをするりと解いて。 「これをつまんでくださいまし。坊っちゃまも大好きなお菓子でございます」  八千代さんが風呂敷から取り出した小箱を小さく揺すると、中からカサカサと微かな音が聞こえた。 「それ……」  何が入っているんですか?と聞こうとしたら、シーッと唇に指を当てられて「食べる時のお楽しみでございます。早く元気になられてくださいね?」と布団にゆっくり寝かされる。  私は横たわりながら、机に置かれた小箱が気になって仕方がないの。
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