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布団の中、まんじりともせず机上の小箱を眺めていたら、
「花々里、ちゃんと休んでるかい?」
頼綱が枕元までやってきて私の傍らにひざまずくと、そっと頬に触れてくれる。
「もう少ししたら俺は仕事に行くけど。なるべく早めに帰るようにするからゴソゴソしないで大人しく待っているんだよ?」
寝巻きに着替えて布団に寝そべっていた私は、頼綱の登場に我慢できなくなってゆるゆると身体を起こした。
「こら、寝てないと――」
ダメじゃないか、と続いたのであろう頼綱のセリフを途中で遮るようにして、
「あ、あの……頼綱。お仕事に行く前にあれを取ってくれない……?」
と、例の小箱を指さす。
「八千代さんがね、頼綱も好きなお菓子だって……」
私の言葉に、立ち上がって箱を手にこちらを振り返った頼綱に、「中身が気になって眠れないの」って眉根を寄せて畳み掛けたら、瞳を見開かれた。
「まったくキミって子は……」
溜め息まじりでつぶやかれた言葉は、でもその態度とは裏腹に、とても優しい声音で。
「食べたら眠れるかい?」
と箱のフタを取る。
布団に座った状態では、立っている頼綱の手元は見えなくて。
私はコクコクとうなずいた。
そうしてみて、頭が痛まないことにホッとして……薬が効いてきたんだって思う。
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