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頼綱が「有難う」って微笑んで、箱からひとつ包みを取り上げるのを見ながら、そんなことを思う。
そうして、手のひらのキャラメルに視線を落として生唾を飲み込んだ。
カサカサと微かな音を立てながら包みを開くと同時、ふんわりと乳製品特有の甘い香りが優しく鼻先をくすぐって。
キャメル色の、市販品より幾分色白で艶々なキャラメルは、手で掴めるギリギリの柔らかさに思えた。でも、だからと言ってネトネトして手にまとわりついて気持ち悪いってこともないの。
「――そう言えば」
ふと思い出した私は、それをつまみ上げながら何の気無しにつぶやく。
「ん?」
私の声に頼綱が小箱を机の弁当横に戻しながら私を見つめてきて。
私はそんな頼綱を目で追いながら続けた。
「子供の頃にね、大好きなお兄さんがいたって言ったでしょう?」
そこまで言ったら、頼綱がどこか不機嫌そうに眉根を寄せたのが分かって、私は一瞬怯みそうになる。
「ちっ、小さい頃の話だよ?」
それで言い訳がましくそう前置きをしてから、それでも最後まで話したい気持ちが抑えられなくて続ける。
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