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「ひょっとして……。あのお兄さんは――頼綱……?」
私の記憶の中にいるお菓子のお兄さんは……貴方なの?
そこまで考えた私は、頼綱が今まで散々、私とは初見ではなかったと言っていたのを強く意識した。
それと同時、幼い頃、あのお菓子のお兄さんのことを、「つな」と呼んでいたことも思い出して。
そうだ。あの頃の頼綱も、私に「よりつな」って呼ばせたがっていた。
でも、何度言わせても「よりちゅな」になってしまう私に、諦めたように「好きに呼んでいいよ。その代わりキミがもう少し大きくなったら、ちゃんと頼綱って呼んでもらうからね」って宣言したの。
それを思い出して、
「つな……?」
って疑問符まじりに小さくつぶやいたら、頼綱が私のすぐ横。まるで崩折れるようにひざを折った。
「花々里っ。子供の頃のこと、思い出したのか? っていうか……キミがずっと言ってた〝お兄さん〟は……僕……?」
ひとつひとつ確認するみたいに言われて、私は頼綱のどこか泣きそうにも見える表情に気圧さながらも何とかうなずいた。
「……よ、頼綱の嘘つきっ。私、小さい頃も、貴方のこと、ちゃんと頼綱って呼べてなかったじゃん」
照れ隠し、咎めるみたいにそう言ったら、ギュッと抱きしめられた。
「呼んでくれてたよ? よりちゅなって舌っ足らずな口調で一生懸命呼んでくれていた。……けど、すまない。――あの頃の僕はまだ幼くて……キミのたどたどしい呼び方が物凄く照れ臭かったんだ」
だから、言いにくいなら好きに呼んでいいって……。頼綱が私にそう告げてきたから、私は「ツナ缶みたいで美味しそう」って理由で「つな」を採用したんだよ?
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