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キャラメルを食べたままで眠ってしまったら、虫歯になりそうって思って。
一旦布団から抜け出して歯磨きを済ませて廊下に出たら、頼綱にギュッと抱きしめられた。
「行ってくるね、花々里。今日は急いで帰ってくるから……夜までには元気になっていておくれね?」
私を抱きしめたまま、耳元で甘えたようにそんなことを言うと、頼綱は名残惜しそうに、一度だけギュッと腕に力を入れてから、私を抱きしめる腕をほどくと仕事に出かけていった。
頼綱、今日は遅番で10時半からの勤務だから、終わるのは19時半になるらしい。
移動時間などを考えると帰宅するのは20時過ぎになってしまうんだろうなって思ったら、ちょっぴり寂しくて。
台所にいらした八千代さんに、「今夜は頼綱が好きなものをたくさん作って待っていたいです」って言ったら、「今日は1日おやすみになって頂かないと、私が頼綱坊っちゃまに叱られてしまいます」とダメ出しをされてしまった。
「心配なさらなくても、私が花々里さんの代わりにしっかり夕飯を作りますから」
とおっしゃって。
「今夜は卯の花の煎り煮、大根とニンジンの味噌汁、芋茎ときゅうりの胡麻酢和え、トビウオの塩焼にしようと思っています」
冷蔵庫を開けて、青々としたツヤッツヤのトビウオを見せられた私は、生唾を飲み込んだ。
新聞紙に包まれてテーブルに置かれた瑞々しい芋茎と大根は、今朝、農協主催の朝市でゲットしていらしたらしい。
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