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高そうな器なのに、欠けさせたり割ったりしてしまったら大変だっ。
それに、何よりはしたなかったよね。
「……ごめんなさいっ」
茶器、割れなくて本当よかった!
しゅんとして謝ったら「悪いことをしたと思った時にちゃんと謝れるのは感心だね」と微笑まれて、うなだれたままの頭を優しく撫でられた。
ふわりと香る例の香りに、我知らずトクン、と心臓が跳ねる。
御神本さん、変な人だとばっかり思ってましたが、いい人かもしれません!
ほら、美味しいものもたくさん食べさせてくれるし、ねっ?
***
「あ、の……ミキモ……、よ、りつ、な……はどうして私にこんなに良くしてくださるんですか?」
どうぞ、と彼の前に置かれていた羊羹を手渡されて、それをきっかけにしたみたいにそう言ってしまった。
これじゃ、まるで美味しいものをくれたから良い人認定したみたいだよっ。
いや、全く違うとは言わないけれど、今の言葉は決してそこだけを指したわけではないのですっ。
思いながら不安げな表情で御神本さんの整った顔を見つめたら、「またバカなことを聞いてくるね」と笑われてしまった。
全然バカなことじゃないと思うんですけど?
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