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「花々里、帰ったよ。ちゃんと良い子にしていたかね?」
頼綱は仕事から帰って手洗い・うがいをするや否や、着替えなどそっちのけですぐに私の部屋へ様子を見にきてくれた。
「お帰りなさい、頼綱っ!」
にっこり笑って言ったら、
「体調は?」
心配そうに聞かれて、私は問題ない旨をガッツポーズをして懸命に表した。
鞄を自室に置いてきてすらいない頼綱に、愛しさが込み上げて、ギュッと抱きつきたい衝動を身振り手振りに転嫁したともいう。
しっかり眠ったお陰で、頭痛はすっかり治まっていて、頼綱を認めるなり布団に身体を起こしたけれど何ともなかったから。
そのことにホッとしつつ、私はずっと気になっていたことを口にせずにはいられないの。
「疲れたでしょう? 一緒にキャラメル食べよう!?」
ってちょっと待って。
違う、そうじゃない。
「あ、あのね、キャラメルも大事なんだけど。私、頼綱にひとつだけ教えて欲しい事があるの。えっと……長くなるかもだし……甘いの食べながら話そう?」
布団の上に正座をして居住まいを正すと、頼綱が机からキャラメルの小箱を手に、すぐそばに座って私をじっと見つめてくる。
「何かな?」
激務を終えて、少し落ちてきているオールバックにセットされた後れ毛がとってもセクシーで、こんなカッコいい人が、本当に私のフィアンセなんだろうかと言いようのない不安にかられた。
私は戸惑いに揺れる瞳で頼綱をじっと見つめると、一度だけ深呼吸をしてから口を開いた。
「まずはキャラメルを――」
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