27.不安だから付けさせて?

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 大学を休んだ日の夜。  すっかり一緒の布団で眠るものだと覚悟を決めていた私は、いつもより少し遅めの夕飯と入浴を済ませたあと、頼綱(よりつな)に客間――一番最初に御神本(みきもと)家にやってきた日に羊羹(ようかん)をご馳走になった和室――に通されて。  それは何だか常ならぬものを感じさせて、逆に頼綱の部屋に通されるよりドキドキしてしまう。  今から何が始まるんだろう?と頼綱の対面に座して目を白黒させる私に、あの日と同じように八千代さんがお茶――と言っても今日は紅茶――を出してくださって。  一緒に、卵の使用量が多くてスポンジの断面が黄色っぽく見える、クリームたっぷりのロールケーキが置かれる。  これ、多分お母さんが大好きだと言っていた城山(しろやま)ロールだ。  直感的にそう思って、そういえば前に頼綱が伝手(つて)を使って取り寄せられるように手配していると話していたっけ、と思い出す。  それが届いたんだって生唾を飲み込みながら思っていたら、 「八千代さんもこのまま」  お茶を出すなり退室しようとなさった八千代さんを呼び止めて、頼綱が居住まいを正して私の前に正座した。  もうそれだけで私、緊張のあまり口から心臓が飛び出しそうで。  ロールケーキに前のめりになっていた姿勢を、心を鬼にしてグッと起こした。
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