2670人が本棚に入れています
本棚に追加
***
「今朝八千代さんにも報告させてもらった通り、花々里がやっと、俺のプロポーズを受けてくれたんだ」
そこで、ロールケーキに手を伸ばした私をチラリと見やると「そうだよね?」と同意を求められて。
私はビクッと身体を震わせて「……はい」と小声で答えた。
何これ、何これ。
改めてこんなふうに確認されたら、物凄く恥ずかしいんですけどっ。
ロールケーキだって食べづらいじゃないっ!
実はそこが1番不満な気もするけれど、笑われそうなので絶対に言わない。
「おめでとうございます、坊っちゃま、花々里さん」
八千代さんが目尻の皺を一層深くして感極まった様子で涙を拭われるのを横目に、私まで思わずウルッときて。
もうこれ、現状のせいで未だに口に入れられないロールケーキへの思いが募りすぎた涙なのか、はたまた普通にこの雰囲気に呑まれてウルルンときてしまったのか、分かんないです。
「それでね、花々里、すごく性急な話なんだけど……この週末、一緒にお母様の所へご報告がてらお見舞いに行かないか?」
奇しくも私、今日布団の中でそう出来たらいいなって考えてた。
だけど「わーい」って飛び付いたらみっともないかな?
ソワソワしながら頼綱と八千代さんを見比べたら、2人とも期待に満ちた目で私を見つめていて。
私は恥ずかしくなって声が出せないままにコクコクとうなずいた。
最初のコメントを投稿しよう!