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「そこで村陰さんに結婚のお許しをいただけたら、証人欄の一方は八千代さんにサインをしていただきたいんです。……もう一方の証人欄は――」
そこで頼綱が私に「どうしたい?」と聞いてきて……。
私はロールケーキから視線を外さないままに少し考えてから、「頼綱のお父様に埋めていただきたい」と話した。
再婚なさっているというお母様は無理でも、頼綱のことを――金銭的な部分が主とはいえ――育ててきたお父様には認めていただきたい。
お父様の財力が全てとは言わないけれど、頼綱が私に惜しみなく美味しいものを食べさせてくれるのは、きっとお父様からのお力添えの賜物でもあると思うから。感謝しないと、って思った。
「――でもそれじゃあ村陰さんが」
当然だよね。頼綱からそう心配された私は、「うちのお母さんは同意書にサインしなきゃいけないから大丈夫だよ」と言ってみる。
一応そこに関しては、お母さんの意見を尊重するという前提付きで、「花々里がそう言うならそうしようか」と頼綱も言ってくれて。
お母さんの性格からすると、きっと呆気らかんと「大丈夫よ」って言ってくれるだろうななんて思いつつ、私は頼綱の言葉にうなずいた。
そもそも大きな声では言えないけれど頼綱、お母さんの所に行く時、きっとこのロールケーキを手土産にするんでしょう?
お母さん、それだけできっとめちゃくちゃご機嫌になるだろうし、早く食べたい一心で、きっと何でもかんでも「うんうん」ってうなずいちゃうと思うの。
あの人、私以上に食い意地張ってるから。
あわよくば私もご相伴にあずかれるかも知れない?などと思いつつ、お母さんの動きを予想してみたり。
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