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それにしても――。
いつになったらみんなの視線が私からそれて、目の前の美味しそうなロールケーキが口に出来るんだろう?
この場では頼綱同様主役なんだと言うのもそっちのけで、さっきからそんなことばかり気にしているって言ったら叱られちゃうかな?
でも。早くしないとせっかく八千代さんが淹れてくださった――恐らく最高級の茶葉を使っている――美味しい紅茶も冷めてしまいますよ?
――ねぇ頼綱、分かってる?
そんな不安を視線に乗せたつもりだったのに。
頼綱の頭の中は今、完全に婚姻届の上で彷徨っているみたい。
いつもならすぐに気付いてくれるはずの私の熱い眼差しを、同意書絡みの不安だと誤解釈しちゃうとか……頼綱らしからぬ失態で、悲しくなります!
結果、何故かおもむろに同意書についてのあれこれの説明が始まってしまって、私、内心「嘘でしょ!」って叫んだの。
――ねぇ、その話、長くなりますか? 頼綱さんっ!
そう叫びたいのは山々だけれど、さすがにこのシリアスな場面でそれはダメだというのだけは分かっているつもりです。
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