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私、結婚に際しては、漠然とお母さんからの同意が要ると言うことは分かっていたけれど、その他の詳細については調べたりしたことがなくて知らないことばかりだった。
だから私の疑問のあれこれに、頼綱が淀みなく色々教えてくれることに感動して。
同時に頼綱が、私と結婚することを本当に真剣に考えて下調べしてくれていたんだな、と実感させられたの。
八千代さんは最初のうちこそ「私なんかが旦那様と同列でそんな重要なお役目をお受けしても宜しいのでしょうか?」と恐縮なさっていたけれど、頼綱が「俺の母親は八千代さんだと思っていますので」と言い切ったことで、ある程度の決心がついたみたい。
「でも……花々里さんはそれで大丈夫でいらっしゃいますか?」
やっとの事、自分からみんなの視線が逸れたのを感じて、「今しかない!」とロールケーキを小さく切り取ってアーンしていたら、八千代さんからのまさかの不意打ち!
私はビクッと身体を跳ねさせて、フォークにさしたばかりのロールケーキの欠片をポロリとお皿に落とした。
クッ。無念!
八千代さんがそれに気付いて「どうぞ」と視線でうながしてくださって。
私は小さく会釈してとりあえず取り落とした欠片を口に放り込む。
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