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週末は予定通り頼綱とともにお母さんのお見舞いへ――。
病室に入ると、お母さんは今まさにリハビリから戻ったばかりだったみたいで、イケメン作業療法士さんに付き添われてベッドに腰掛けている最中だった。
来月には退院予定だけれど、退院後もしばらくはリハビリには通うようになるみたい。
そう説明をして、私たちに軽く会釈をしてスタッフさんが部屋を後にしたのを見計らって、
「村陰さん、ご無沙汰しています」
「お母さん、イケメンスタッフさんに抱っこされちゃうとか、めっちゃ緊張したんじゃないっ!?」
頼綱と私、ほぼ同時に――だけど全く違う内容の言葉をお母さんに投げかけた。
私のセリフを聞いた途端、頼綱が不機嫌そうに「イケメン?」とつぶやいて、私は「ひっ」って声を上げて思わず頼綱の横から飛びのいた。
それを見たお母さんが堪えきれないみたいにクスクス笑って。
その、血色のよい顔を見て、私は心底ホッとする。
お母さんはすこぶる元気そうで、入院したばかりの頃はどうなることかと思ったけれど、近頃はベッドから起き上がっている時間も増えてきたらしい。
「花々里ちゃん。元気そうでお母さんホッとしたわぁ〜」
そこまで言って、私をじっと見つめると、
「――あら、少しふっくらしたんじゃない?」
ひとしきり笑い終えてから、お母さんってばグサッとくることを言ってきた。
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