28.初めての気持ち

2/18
前へ
/703ページ
次へ
 ジュエリーショップに着くなり、 「ねぇ花々里(かがり)。婚約指輪と結婚指輪、双方を重ね付け出来るデザインとか……良いと思わないかね?」  と頼綱(よりつな)に尋ねられた。  私はちょっと考えて、 「あまりごちゃごちゃした凝ったデザインよりも、シンプルな方が好き。そこさえクリアしていたらどんなのでも気にしない、かな」  って答えてから、このこだわりのなさ、女の子としてどうなの!って思ったんだけど――。  どうやら頼綱にはすでに何か思うデザインがあったみたいで、さして気にした風もなく 「キミはきっとそう言うだろうと思って、勝手かなと思ったんだけど、実はあらかじめ俺の方でいくつか見繕(みつくろ)ってあるんだ」  と微笑んだ。  その言葉を聞いて、「嘘でしょ頼綱さん!」って思ってから、でも考えてみたら頼綱は私と初めて出会った時から私を(めと)る気満々の発言をしてたっけ、と思い出して。  もしかしたら、私にとっては青天(せいてん)霹靂(へきれき)みたいな頼綱からのアレコレも、彼の中ではどれもこれも考え抜いた末の結論なのかもしれないなって……今更ながらハッとした。
/703ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2670人が本棚に入れています
本棚に追加