28.初めての気持ち

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 頼綱(よりつな)が店員さんに声をかけると、いくつかの指輪がジュエリートレイに載せられて運ばれてきて。  その中のひとつを指差した頼綱に、「婚約指輪は雲間から現れる満月を模したというデザインの、コレとかどうかな?」と聞かれた。  頼綱と店員さんに促されるまま、手に取って見させていただいたソレは、台座の部分が雲の切れ間みたいに(ダイヤ)の両サイドで透かしになっていて凄く綺麗で。  石が真ん中に1つだけというシンプルさも、私好みだった。  しかもその1石を捕らえた台座が、()め込みデザインなのがすごくいいなって思ったの。  私、爪で石を掴むタイプだと、結構あちこちに引っ掛けちゃうおっちょこちょいで。  特に冬なんかセーターの繊維とかを爪によく絡ませるの。  そういう面も含めて、ガチャガチャした私にピッタリの指輪だなって思ったんだけど。 「気に入ったかい?」  目をキラキラさせて、手にした指輪を店内の照明にかざして()めつ(すが)めつしていたら、頼綱(よりつな)にそう聞かれてしまった。
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