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それで、自分の割り当ての羊羹の残り――半分くらいは残ってた――を、切り分けもせずブスリッと黒文字に突き刺して一息に頬張ってやったの。
御神本さんのことなんて羊羹の上品な甘さで消し去ってくれるわっ! ふはははは!!……みたいなノリで。
腹いせのつもりだったのに、そんな私を見て御神本さんが嬉しそうに笑うの。
もぉ、何なのよ、調子狂っちゃうでしょ!?
そればかりか――。
「花々里は本当、なんて愛らしいんだろうね。思えばあの時もそうだった」
ってうっとりつぶやくとかっ。反則じゃありませんっ!?
ドキドキして思わずお茶、一気に煽っちゃったじゃないですかっ!
あーん、羊羹の甘くて幸せな余韻、お茶で流れてっちゃったぁぁぁぁ!!!!!!
それがショックで、じんわり目尻に涙を浮かべて御神本さんを恨めしげに見つめる。
そうしてポツンと問いかけた。
「私の何がそんなに気に入ったって言うんですか……」
考えてみたら、私の名前を呼びかけてきた直後から……だよね?
御神本さんの優しい餌付け攻撃がはじまったの。
〝初めまして。おや、お腹がすいてるみたいだね?
じゃあ俺が美味しいもの食べさせてあげよう。
美味いと思ったならとりあえず結婚しようか?〟
に近いものを感じてしまったんだけど、ずっと放置してたくせに、いきなり距離削りすぎじゃないですかっ?
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