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「ほら、出来た。――すごく似合ってる」
頼綱はそんな私の視線をクスッと笑ってかわすと、鏡を指さして「ご覧?」とうながすの。
私は目端が潤むのを感じながら、何とか鏡を見て。
頼綱が選んでくれたイヤリングが耳元で小さく揺れているのを目にして、じんわりと心が温かくなった。
「指輪が仕上がるまでの間は、毎日これを付けていてくれるかい?」
頼綱がそう言って、私の髪の毛をそっと撫でて、ついでのように微かに耳朶にも掠めるように触れながら問うてくる。
私はその感触に反応しそうになった身体を戒めるようにギュッと力を入れて踏ん張ると、それでも「ん……」と喘ぎ声だか返事だか分からない吐息を落とした。
私の返事を受けた頼綱が、
「けど……このままじゃあまり面白くないな」
ってつぶやいて。
しばし思案するような素振りを見せてから、何かを思い付いたように「うん、そうしよう」ってひとり納得してニヤリと笑ったのが鏡ごしに見える。
「頼綱?」
また何か良からぬことを思い付いた?とソワソワする私をよそに、頼綱は何を思い付いたのかは言ってくれなくて、代わりに店員さんに「これはこのまま付けて帰っても構わないかな?」って問うの。
店員さんは、「もちろんです」と応えてイヤリングが入っていた箱や保証書などを小さな紙袋に入れて、手渡してくださった。
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