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ポツンと……でもハッキリとした声音で言ったら、頼綱が「え?」とつぶやいて。
ウィンカーを上げて車を路肩に止めた。
幸い夜でそれほど車通りも多くなかったから、こんな風に道路の片隅に停車していても通行の邪魔にはならなさそう。
カチカチというハザードランプの乾いた音が、車内にやけに大きく響いて。
「花々里、いま、大学を辞めるって言ったの?」
やっと頼綱が私の方を向いてくれた。
その理由が私の発言のせいというのは何となく不満だけれど、それだけ頼綱にとっては衝撃の内容だったってことだよね。
そりゃそうか。
学費、今年度分は一括納入してあるわけだし。
しかもそれを手配してくれたのは他ならぬ頼綱だもの。
最初はそれを盾に脅される形で彼とのご縁が結ばれたんだっけ、と懐かしく思い出しつつ。
「うん、辞めるって言ったの」
そう言った途端、頼綱がギュッと私の肩を掴んできて。
「何で?」
って低い声音で問いかけてくるの。
いつもの大人な色香マックスの、穏やかな頼綱からは想像がつかないような迫力に気圧されて、思わずひるみそうになる。
でも、ダメ。
ここはちゃんと話さないと。
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