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私の肩にかかった、頼綱の腕に力がこもって少し痛い。
「頼綱が産科を辞めようとするの、止めたいの。――けど、今のままの私じゃダメだって思ったから」
「花々里。悪いけど意味が……分からないよ?」
その痛みに眉をひそめながらもそう言ったら、頼綱がその様子に気付いて手の力を少し緩めてくれた。
あざになるほどではないと思うけれど、強い力で掴まれた肩がまだちょっぴりジンジンしている。
でも、そんなことはどうでもいいの。
「痛くしてすまない。――けどね花々里。俺が産科から撤退するのと、キミが学校を辞めるのとは別の話だと思うんだがね?」
ややして私から身を引いて、眉間を揉むような仕草をしながら、頼綱が運転席にもたれて小さくそうつぶやいて。
私はそんな頼綱に、「別じゃないわ」って即座に返した。
頼綱はその声に驚いたように私を見て。
そこでふと思い出したように言うの。
「だが花々里。今年度分の授業料はすでに支払ってあ――」
「それも! 何もかも承知の上で言ってるのよ!?」
頼綱の言葉を遮るように言って、彼の顔をじっと見上げる。
「何故……」
そんなに頑ななのか?って聞きたいのよね?
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