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「たっ、食べるの……やめ……」
――ておきます。
そっと、今いただいたばかりの羊羹を御神本さんに差し戻そうとして……艶々と濡れ光った目で私を見てくる?羊羹と見つめ合って?、惜しみがかかる。
結果、言葉尻が濁って最後まで言えなかったの。
なのに。
「ん? さすがにお腹一杯になってしまったかな?」
御神本さんの手がスッと伸びてきて、さっきもらったばかりのお皿を私の前から引き取ろうとして――。
「あっ、待っ……」
思わず御神本さんの手ごとお皿を引き止めてしまって、何て大胆なことをしてしまったの!とぶわりと顔が熱くなった。
「ごめ、なさっ」
慌てて手を引っ込めようとしたら、その手の上に御神本さんがもう一方の手を重ねてきて、押さえられてしまう。
「あ、あの……」
羊羹の載ったお皿を掴んだ御神本さんの右手の上に私の右手が、その私の右手の上に御神本さんの左手が……。
何この「親亀の背中に子亀を乗せて、子亀の背中に孫亀乗せて、孫亀の背中にひい孫亀乗せて、親亀こけたら、子亀孫亀ひい孫亀こけた」みたいな状態。
あ、私、左手も乗せないとダメ?
ん? ん?
ドキドキしながら御神本さんの手の上に、今や1本のみ取り残されて?仲間外れになってしまった?左手を乗せようとして、「あ、でもこれ乗せたらみんなひっくり返っちゃう!」と思って躊躇する。
と、御神本さんがクククッと喉を鳴らして笑うの。
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