5.根回しがお上手ですね

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「たっ、食べるの……やめ……」  ――ておきます。  そっと、今いただいたばかりの羊羹(ようかん)御神本(みきもと)さんに差し戻そうとして……艶々と濡れ光ったくる?羊羹(ようかん)と見つめ合って?、惜しみがかかる。  結果、言葉尻が濁って最後まで言えなかったの。  なのに。 「ん? さすがにお腹一杯になってしまったかな?」  御神本(みきもと)さんの手がスッと伸びてきて、さっきもらったばかりのお皿を私の前から引き取ろうとして――。 「あっ、待っ……」  思わず御神本(みきもと)さんの手ごとお皿を引き止めてしまって、何て大胆なことをしてしまったの!とぶわりと顔が熱くなった。 「ごめ、なさっ」  慌てて手を引っ込めようとしたら、その手の上に御神本(みきもと)さんがもう一方の手を重ねてきて、押さえられてしまう。 「あ、あの……」  羊羹(ようかん)の載ったお皿を掴んだ御神本(みきもと)さんの右手の上に私の右手が、その私の右手の上に御神本(みきもと)さんの左手が……。  何この「親亀の背中に子亀を乗せて、子亀の背中に孫亀乗せて、孫亀の背中にひい孫亀乗せて、親亀こけたら、子亀孫亀ひい孫亀こけた」みたいな状態。  あ、私、左手も乗せないとダメ?  ん? ん?  ドキドキしながら御神本(みきもと)さんの手の上に、今や1本のみ取り残されて?仲間外れになってしまった?左手を乗せようとして、「あ、でもこれ乗せたらみんなひっくり返っちゃう!」と思って躊躇する。  と、御神本(みきもと)さんがクククッと喉を鳴らして笑うの。
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