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「頼綱、赤ちゃん取り上げるの、嫌いじゃないでしょう?」
言ったら頼綱がグッと言葉に詰まって。
「それはそうだが、それをうちの病院では続けていけない理由はさっき話しただろう?」
頼綱の視線が恨めしそうに私をとらえる。
私はそんな頼綱に、ニコッと笑って言った。
「だからね、私。夏ヶ丘大学を辞めて、夏ヶ丘医科大学に入り直したいのよ!」
言ったら、頼綱がもたれていたシートから身体を離して、私の顔を驚いた顔で見つめてきた。
そりゃそうか。
同じ系列の大学とはいえ、私がいるのは同大学内の文学部。
いきなり医療系に転向したいとか言われても「は?」ってなるよね。
私が頼綱の立場でも驚くもの。
気でも触れたのか?って。
でも……頼綱からご両親のことを聞かされてから私、ずっと考えてたのよ?
私が頼綱と常に一緒にいられる方法。
頼綱のご両親と同じ轍を踏まずにいられる方法。
それにはこれしかないって思ったの。
「あのね、頼綱。同系列だから……うちの大学へ納入済みの学費、来年度以降のそちらの学費に回すことが出来るみたいなの」
もちろん、満額というわけにはいかないけれど、ドブに捨てたみたいになる、よその大学への転身よりは無駄がない。
夏ヶ丘大学自体、偏差値の低い大学ではないし、同系列とはいえ、文学部から医科大学への編入ともなると、そのハードルがさらに上がることは痛いくらい分かってる。
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