29.彼の不安と彼女の決断

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「よ、りつなっ。――ここ、公道っ!」  夜とはいえ国道の路肩でこんなっ。  真っ赤になって慌てふためく私に、頼綱(よりつな)が腕を緩めてくれないままにポツンとつぶやいたのが聞こえた。 「花々里(かがり)のことを好きになって……キミを伴侶にすると決めて……本当に良かった」  私は、頼綱がそう言ってくれたことが何よりも嬉しくて……絶対に最短で目標を達成してやるんだ!って心に誓ったの。  大学入学と同時に危機に(ひん)してあれこれ頑張ったのは伊達じゃない。  知ってると思うけど私、精神だけは誰にも負けないんだからっ! 「ねぇ、頼綱。編入試験に無事合格できたら……鰻、食べさせてくれる?」  言った途端、さっき夕飯を食べたばかりなのに、お腹の虫が「ハングリー(ぐぅー)!」と鳴いて、頼綱に「実に花々里(かがり)らしいね。もちろん約束しよう」って笑われてしまった。
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