30.私にぴったりの?

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花々里(かがり)。指輪が出来たみたいだよ。明日は俺、早番で少し早く帰れるし……夕方一緒に取りに行こうか」  大学を辞めるにせよ何にせよ、今すぐというわけにはいかなくて。  もちろんお母さんにも相談しないといけなかったし、色々な手続きもある。  頼綱(よりつな)に、胸のうちに秘めていた思いをぶつけてから3週間。  宝石店から電話があったとかで、頼綱が私の部屋の扉をノックして顔を覗かせるなりそう言って微笑んだ。  その笑顔にうっとり見惚れて反応が少し遅れてしまって、 「花々里(かがり)?」  頼綱に怪訝(けげん)そうな表情(かお)をされてしまった。  編入試験に向けて勉強だけは開始しておこうと思った私は、頼綱が用意してくれたテキストを使って時間を見つけては少しずつ勉強しているのだけれど、明日ほんの少し頼綱とお出かけをするぐらいは許されるよね。 「う、うんっ」  シャーペンをノートの上に転がして伸びをしながら言ったら、「進んでるかね?」と聞かれて。 「えっと……。まぁまぁ、かな」  実際(はかど)っているかと聞かれたら可もなく不可もなくと言ったイメージ。
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