30.私にぴったりの?

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「えっ?」  その言葉が信じられなくて思わず頼綱(よりつな)を見上げたら、そのままあごをすくい上げられて、唇に軽い口付けを落とされる。 「あ。よ、り……つなっ」  小さく吐息を落とすように彼の名を呼んだら、 「そんな熱の(こも)った目で見つめないで? ――我慢できなくなる」  ってフイッと目を逸らされてしまった。  私たちは結局入籍もまだで……何なら添い寝だってあの未遂(みすい)の日以来1度もない。  頼綱のお父様へは一度時間を作ってちゃんと紹介して頂いたけれど、家同士の正式な顔合わせはうちのお母さんが元気になってからということになって、色々と順番がごちゃごちゃになっている。  それでかな?  あるのは今みたいな軽い口付けだけで、大人がするような、もっと深いキスもなし。  頼綱はあんなに色々性急に進めたがっていたのに、不自然なくらい二の足を踏んでいる気がして。  ――一体、どうしちゃったんだろう? これってもしかして。 「あ、あのっ、頼綱っ。わ、私、魅力、ない?」  不意に不安になった私は、思わず椅子から立ち上がって、顔を微妙に私から背けたままの頼綱の手にそっと触れた。  途端頼綱がビクッと肩を跳ねさせて、そのことに私は驚かされる。
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