30.私にぴったりの?

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頼綱(よりつな)……?」  ギュッと頼綱の指先を握って彼の前に回り込むと、うつむけられたままの彼の顔を、下から覗き込んだ。 「――にゃふっ!?」  ちょ、ちょっと待って!?  嘘でしょ、嘘でしょ!?  私、いま、驚きのあまり変な声が出てしまったじゃないっ!  頼綱が真っ赤になって目端を潤ませていたとか……きっと気のせい、だよ、ね?  恐る恐るもう1度頼綱の表情を(うかが)い見たら、気のせいなんかじゃなくってドキッと心臓が跳ねる。  私は頼綱の表情に釣られたように、自分の頬がぶわっと熱くなるのを感じた。 「……何をバカなことを。花々里(かがり)が魅力ないわけがないだろう?」  ――実際ありすぎて困ってるんだ。   ボソリと吐き捨てるように付け加えられた言葉に、私はますます照れてしまう。  そう。 「なっ、なっ、なっ」  ――何を言い出すの!?  が言えなくて、「な」ばかり連呼してしまう程度には。  私、恥ずかしさに混乱していますっ! 「あのね、花々里(かがり)。キミは今からすごく大変な時期に入る。俺のせいで変に疲れさせてはいけないと思ってるんだが、察してはくれないか?」  言われて、頼綱はもしかして私のために〝我慢〟してくれているの?と思って。 「頼綱?」  恐る恐る彼の名を呼んだら、頼綱がほぅっと溜め息を落とした。 「俺なりの願掛けみたいなもんだよ。キミが無事試験に受かるまで、俺は花々里(かがり)に手を出したりしない。正直結構しんどいから……一発で合格しておくれね?」  恨めしそうに釘を刺されて、私は小さく息をのんだ。
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