30.私にぴったりの?

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***  翌朝7時前に仕事へ出かけていった頼綱(よりつな)は、前の晩私に話してくれた通り16時過ぎには帰宅してきた。  たまたま私も3コマしか講義の入っていない日で、15時までには大学が終わっていて。  御神本(みきもと)邸から大学までの道のり。ひとりでの行き帰りにあんなに不安があったのに、頼綱がスマートフォンに入れてくれたナビアプリのおかげで、ここ数日は1人で難なく大学と家とを往復出来る様になっていた。  頼綱が、壊れた私のガラケーをスマホに変えようと言ったのはこのためだったんだ、と今更のように思い至った私は、「文明の利器すごぉーい!」と感心しきり。 ***  頼綱のことが好きなのだと告げた直後、私のことを諦めないと言っていた寛道(ひろみち)に、私は追い討ちをかけるみたいに頼綱と正式に婚約したこと、入籍も近いうちにする予定なことを告げて。  あやふやなままでいるよりは、と思ってのことだったのだけれど、正直かなり緊張したの。  だけどその話をした時、寛道はそんなに取り乱さなくて。私、内心「おや?」と思った。  もう少し何か言われるかも?って思っていただけに拍子抜けはしたものの、食い下がられるのは辛いなって思っていたから、密かにホッとしたのも事実。  良くは分からないけれど、寛道は寛道なりに色々考えて、私のこと、吹っ切ってくれたのかな?  そうして、当たり前だけどそれ以来、寛道が登下校時に私を待っていてくれることもなくなった。
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