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「こちらへどうぞ」
宝石店に入ると、店員さんがすぐさま奥に通してくださって、テーブルの上に少し大きめの白いリングケースを1つ置いてくださる。
あらかじめ中が見えるように蓋が開けられたそれを見て、「手にとっていいのかな?」ってドキドキしながら、何となくすぐ横に座る頼綱を見た。
「どうぞ、お手にとってご確認ください」
私の気持ちを察したみたいに店員さんがにっこり笑ってそう言ってくださって。
「遠慮せず見てご覧?」
頼綱にも優しく勧められた私は、恐る恐るリングケースに手を伸ばした。
まずは望月に見立てた石がキラリと光る、婚約指輪から。
リングの内側をそっと覗くと、注文通り「Y to K」の刻印。
それから何故か今日の日付。
――あれ? ここって入籍日を入れるって話だったような?
そう思った私だったけれど、入籍日がなかなか決まらないから納品に間に合わなくて、受取日を入れることにしたのかな?とか思って。
購入日だって、考えてみたらこの指輪を手にした記念日だもんね。
指輪なんてもらったことがないからよく分からないけれど、そんなこともあるのかしら、とか考える。
それよりも問題なのは、頼綱が店員さんとコソコソ話していた結婚指輪だ。
頼綱、私に内緒で店員さんに何を頼んだんだろう?
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