30.私にぴったりの?

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 婚約指輪をリングケースに戻して、結婚指輪にそっと手を伸ばした私を見て、頼綱(よりつな)がクスッと笑ったのが見えた。  ――な、なんで笑ったの?  頼綱の態度を不審に思いながらも指輪を手に取って内側を見て。 〝Bon appetite! Kagari〟  の文字を見て、最初「ボン アペチテ」って読んでから、違う、「ボナペティ」だって思って。けど、読めたところで「ボナペティって何だっけ?」と首をひねる。 「あの、これ、どういう意味……?」  聞いたことのある文言だけど、「愛してる」とかそんな意味の言葉だったかしら?  いや、でもなんか違う気が……。  うー、横文字苦手だから分かんないっ!  そんなことを考えながら恐る恐る頼綱(よりつな)を振り仰いだら、 「『Bon appetite!(どうぞ召し上がれ!) 花々里(かがり)』って書いてあるんだよ? 食事を楽しんで、とかたくさん召し上がれ、って取ってもらっても構わないけどね」  ってにっこり笑うの。 「どうぞ召し……あ……?」  えっ!?  キョトンとする私に、頼綱が「俺としてはたくさん召し上がれ、って気持ちで入れたかな?」って繰り返して。  ――なっ、何でそんな文言を結婚指輪に!?  って思った私だけれど、「はね、花々里(かがり)。キミに美味しいものをたくさん食べさせるのが自分の使命だと思ってるから」って凄く幸せそうに微笑まれて何も言えなくなってしまう。  そうしておいて、「もうひとつの細工にも気付いて欲しいんだがね?」って催促してくるの。
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