31.私の本心、分かってますか?

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「――花々里(かがり)。やっと……だね」  私の編入試験が無事に終わるまでは私にキス以上のことはしないと決めていたらしい頼綱(よりつな)だけど……。 「やっと、って……あ、あのっ、えっと……どう言う……?」 「何を(とぼ)けたことを。無事試験に合格できたんだ。とりあえず解禁で構わないだろう? それに――」  スッと重ね付けにした左手薬指の指輪をなぞられて、私はくすぐったさに思わず手を引こうとして、頼綱に阻止されてしまった。 「キミは戸籍(こせき)の上ではもうずっと前からの妻だ。待ってる間に年齢も二十歳(はたち)を越えた。――先に進まない理由なんてないよね?」  グイッと握られたままの手を引かれて、頼綱の腕の中に抱きしめられる。 「さ、先って……」  私だって子供じゃない。  頼綱の言う〝先〟の意味が分からないわけじゃないけれど、それでも恥ずかしさからつい確認したくなってしまうのは仕方がないよね? 「在学中は子供が出来るような真似はしないから安心おし? ――時に花々里(かがり)はこういう方面、全く経験がないと思ったんで差し支えないかな?」  私を抱きしめる頼綱の腕に力がこもって、耳元に熱い吐息が落とされる。
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