31.私の本心、分かってますか?

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「だって……改めてそんな風に言われたらっ。すごくすごく恥ずかしくてたまらなかったんだものっ! わ、笑うことないじゃないっ」  私だけガチガチに緊張しているみたいなのが悔しくて、笑われてしまったことを拗ねて見せたら、頼綱(よりつな)に「揶揄(からか)ったつもりじゃなかったんだがね。つい浮かれ過ぎていたみたいだ。――もしそう取れたんだとしたら、すまない」って素直に謝られた。 「俺は至極真剣に心の底から花々里(かがり)のことを欲しているんだけど……どうやったらそれを伝えられるかな?」  そう言ってしばし考え込むような間があって。  不意に耳元へ甘くささやくような言葉が落ちてくる。 「そうだ。花々里(かがり)。最後までちゃんと出来たら……(うなぎ)を食べに行かないか?」  言われて、私は「鰻!?」と目をキラキラさせて。  元より合格祝いはそれだと、指輪を見に行った夜、車内で約束したことを頼綱が忘れているはずがない。  それなのにわざわざ「お祝い」と言う言葉を試験以外にも掛けたような、こんな言い方。 (どうして?)  そこまで考えて、思い至った。
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