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「だからって……。何で私の悪阻、いつもいつも食べてないとダメなのぉぉぉぉ!?」
飴の甘さを舌の上で転がしながら言ったら、「食べられなくなって点滴しなきゃいけなくなるより、俺としては花々里らしいその悪阻の方がしっくりきて安心なんだがね」って頭をふんわり撫でられた。
「でもっ。頼綱も分かってると思うけど……初期にそんなに体重増やすわけにはいかないんだよっ?」
子豚ちゃんにまっしぐらの危機です! 由々しき事態です!と涙目で訴える私を、頼綱が「――もちろん対策は講じなきゃいけないけどね」って優しく抱きしめてくれる。
私の悪阻は、空腹になると吐き気がするタイプの、いわゆる「食べ悪阻」と呼ばれるもので、常に何かを食べていないとしんどいの。
だからと言って、もともと食いしん坊な私が、欲望の赴くままに何かを口にしちゃってたら体重計に載るのが恐ろしいことになってしまうのは火を見るよりも明らかで。
まさか、職場で食べ悪阻に苦しむ妊婦さんたちに偉そうにアドバイスしていたことを、自分自身が実践しなきゃいけなくなる日が来るなんて、私、思いもしなかった。
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