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きっと、私のお腹の中の赤ちゃんは、私と長年連れ添ってきたお腹の虫同様、究極の食いしん坊さんに違いない。
お腹の中、食い意地の虫とちっちゃなちっちゃな赤ちゃんが、ミルクを酌み交わしながらおしゃぶり片手にどんちゃん騒ぎをしているのを想像してブルっと身震いしたら、頼綱が「何を想像したの?」って聞いてきて。
涙目で「私のお腹の中で腹ペコ虫と胎児がミルクで酒盛りしてるのっ」って訴えたら、変な顔をされてしまった。
「花々里が飲まなきゃ中の住人も酒盛りは出来ないと思うよ? ――っていうか、それ。そもそもミルクなの、酒なの? ねぇ花々里。まさかと思うけど、僕に内緒で飲酒とかしてないよね?」
突然私が支離滅裂なことを言ったりしたから、もしかして酔ってる?って疑われてしまったのかも?
「飲んでなんっ、……んん!」
飲んでなんかいないよ?って言おうとしたら、言葉半ばで頼綱に深く口付けられて。
まるでお酒を嗜んだりしていないことを確認するみたいに口の中を探られた上、「……甘い」とつぶやかれて「よしよし」と頭を撫でられた。
よ、頼綱の馬鹿っ。イメージの話だったのに、なに真に受けちゃってんのよ! びっくりしたじゃないっ。
照れ臭さにそわつく私をよそに、頼綱はケロリとした顔をして、「僕としてはご馳走出来る食いしん坊さんが増えるの、今から楽しみで堪らないんだけどね」って心底嬉しそうに私のお腹に触れてくるの。
頼綱めっ。
この子が育ち盛りになった時、エンゲル係数が跳ね上がってピィーピィー泣く羽目になっても知らないんだからね!?
村陰家直伝の食いしん坊遺伝子、舐めんなよーっ!?
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