32.Epilogue

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*** 「食事は八千代さんにも協力してもらって、なるべく少量を小分けに摂るようにしてるだろう?」  頼綱(よりつな)の言葉にうんうん、とうなずく。  途端込み上げてきた何となくしょっぱい生唾に、口元を押さえて立ち止まる。  うー、まずい。  なんかまた気持ち悪くなってきた……。 「頼綱……。飴玉……」  言ったら、スーツのポケットから取り出した飴を、「ゆっくりお食べ」って包みをほどいてそっと口に入れてくれる。  飴。自分で持っていたら、つい高速でコロコロコロコロ転がして次々に食べてしまうから、一緒にいる時は頼綱に管理してもらっているんだけど。 「あ、この味。懐かしいっ」  出会ったばかりの日、鰻味(うなぎあじ)のファーストキスを嘆いた私に、頼綱が桃味とレモン味の飴で誤魔化そうとしてくれたことがあったのをふと思い出す。  私の言葉に、頼綱が「よく覚えていたね」って笑って。  「頼綱だって」って言いながら、ふたりで顔を見合わせてクスクス笑って。 「出来ればこの飴を食べ終わるまでにお買い物済ませちゃいたいな?」  桃の吐息を吐きながら、頼綱の服の裾をチョンチョンと引っ張って言ったら、「承知した」ってその手をギュッと握られた。 「おからパウダーと飴とラムネとゼリー。他には何がいいかな?」  頼綱(よりつな)とふたり買い物カートを押しながら、空腹時にちょこちょこつまめる低カロリーの食べ物をカゴに入れていく。  おからパウダーは、最初おからクッキーを買おうと思ったんだけど、豆腐コーナーにパウダーが売られているのを発見して、頼綱と「家で作った方が安心かな?」って話になって。  八千代さんに電話で相談したら『お任せください。美味しくて低カロリーなのをお作りいたします!』って太鼓判を押して頂けたから甘えちゃうことにしたの。
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