32.Epilogue

19/28

2663人が本棚に入れています
本棚に追加
/703ページ
***  予定日を5日ほど過ぎた、快晴予報の朝。  その頃にはさすがに仕事も産休に入っていて、家でのんびり過ごさせてもらっていたのだけれど、私ってば夏の暑さにもお腹の圧迫にも負けず、食い意地が元気に健在で。  食べ悪阻(つわり)こそ妊娠中期の半ば頃には落ち着いたけれど、食欲は衰えなかったから我ながら凄いって思った。  結果、太り過ぎないよう毎日のウォーキングが日課になって。  最近では夏の射るような日差しを避けて、早朝にお散歩するようにしていたの。  薄暗い日の出前とは言え、歩けばそれなりに汗をかいて。  それを流したくてシャワーを浴びるために服を脱いだら下着を薄らと汚す〝おしるし〟に気が付いた。  「わわわ、ついに!?」って思いながらも、冷静にシャワーを浴びて。  髪をタオルドライしながら頼綱(よりつな)に、「おしるしが来たからそろそろかも知れない」って話したの。  私がそう言った途端、ソワソワしながら「何かあったらすぐに連絡するんだよっ? いいね!? 分かったね!?」って、目に見えて狼狽(うろた)える頼綱に、いつも仕事で赤ちゃんを取り上げていても、いざ我が子のこととなるとただの心配性のお父さんになっちゃうんだなぁって可笑しくなった。
/703ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2663人が本棚に入れています
本棚に追加