2663人が本棚に入れています
本棚に追加
/703ページ
***
「ただいま。――おや? やけにいい香りがしてるけど2人で何をしてるのかね?」
八千代さんが買ってきてくださった鰻の蒲焼きを、フッ素加工されたトースタープレートにアルミホイルを敷いて載せると、お酒を少量振ってふわっと包み込む。
それをオーブントースターに入れてスイッチを3分程回したところで、頼綱がキッチンに顔を出した。
久々の鰻にテンション駄々上がりで、頼綱の帰宅に気付けなかった私は、その気まずさを誤魔化すように「今ね、戦飯を用意してるのよ♥」と、私の手元を覗き込んでくる頼綱に微笑んだ。
「いくさめし……?」
キョトンとする頼綱に、「ほら、頼綱にも手伝ってもらうんだから。手、洗ってきて?」と視線で彼を洗面所へ促す。
八千代さんはそんな私達の横、大葉を細かく千切りにして、適量の白胡麻とともにボールに取り分けた炊き立てのご飯に混ぜ込んでいらして。
私、鰻の蒲焼きしか頼まなかったのに、さすがです、八千代さん!
大葉と胡麻の香りがふんわり鼻腔をくすぐって、私は「美味しそう!」ってニンマリする。
最初のコメントを投稿しよう!