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「手、洗ってきたよ」
頼綱がキッチンに戻ってきたところで、丁度トースターがチン!と鳴って。
私はワクワクしながら扉を開けた。
「イタタタ……」
そこでお腹がキューッと痛くなって、思わずテーブルに手を付いて動きを止める。
テーブルについた指の先が白くなっちゃうくらい手指に力が入った。
……痛いっ。
でも鰻、早くトースターから出さないと余熱で焦げちゃうっ。
「よ、りつなっ、お願、いっ。私……の代わりに、ほかほかのウナ、ギをっ」
息を吐きながら痛みを逃すようにして言ったら、頼綱が「花々里、陣痛の間隔は?」と聞いてくる。
「んー、20分……切っ、たくらい、かなっ」
言ったら「それ、こんな悠長に飯を作ってる場合じゃないよね?」って……そんなの分かってるっ!
――だから急いで頑張ってるのよぅ!
「でもっ! これ、絶対いる、の! 頼綱がウ、ナギ禁止令出、した時っ、陣痛の……合間にっ、鰻入りの手毬お、むすびっ、ムシャムシャす、るって……私、決め、てたんだ、もん!」
痛みを吐息で散らしながら言ったら、頼綱が瞳を見開いて。
「花々里。まったくキミって人は……。ずっとそんなことを考えていたの?」
溜め息まじりに苦笑された。
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