32.Epilogue

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「手、洗ってきたよ」  頼綱(よりつな)がキッチンに戻ってきたところで、丁度トースターがチン!と鳴って。  私はワクワクしながら扉を開けた。 「イタタタ……」  そこでお腹がキューッと痛くなって、思わずテーブルに手を付いて動きを止める。  テーブルについた指の先が白くなっちゃうくらい手指に力が入った。  ……痛いっ。  でも(うなぎ)、早くトースターから出さないと余熱で焦げちゃうっ。 「よ、りつなっ、お願、いっ。私……の代わりに、ほかほかのウナ、ギをっ」  息を吐きながら痛みを(のが)すようにして言ったら、頼綱が「花々里(かがり)、陣痛の間隔は?」と聞いてくる。 「んー、20分……切っ、たくらい、かなっ」  言ったら「それ、こんな悠長に飯を作ってる場合じゃないよね?」って……そんなの分かってるっ!  ――だから急いで頑張ってるのよぅ! 「でもっ! これ、絶対いる、の! 頼綱がウ、ナギ禁止令出、した時っ、陣痛の……合間にっ、鰻入りの手毬(てまり)お、むすびっ、ムシャムシャす、るって……私、決め、てたんだ、もん!」  痛みを吐息で散らしながら言ったら、頼綱が瞳を見開いて。 「花々里(かがり)。まったくキミって人は……。ずっとそんなことを考えていたの?」  溜め息まじりに苦笑された。
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