32.Epilogue

27/28

2663人が本棚に入れています
本棚に追加
/703ページ
 あ、やばいっ。  また!  振り返りざま、椅子の背もたれをギュッと握って手指に力を込めながら、 「よ、りつ、なっ、そ……このラッ、プ、切っ、てくれる?」  私たちの迫力に押されて呆然と立ち尽くす頼綱(よりつな)に、痛みでフルフル震える指でラップの細長い箱を指し示したら、頼綱が慌てて動いて。  そうしてラップの箱を手に、「どっ、どのくらい?」とか。  ――頼綱さん、まさかそれ、切る長さを聞いていらっしゃいます?  一口サイズの手毬(てまり)おむすびを作りたいので、「20セ、ンチくら、いっ」と声を絞り出すように言ったら、頼綱ってば、私の様子にオロオロしてか、今度はなかなかラップの端が掴めなくてするの。 「お貸しくださいまし」  とうとう見かねたらしい八千代さんに、ラップを箱ごと奪われてしまった。  結局、一口サイズの(うなぎ)乗せ手毬(てまり)おむすびは、痛みの合間を縫うようにして頑張った私と、始終テキパキと動く八千代さん2人の共同作業で完成してしまいました。
/703ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2663人が本棚に入れています
本棚に追加