■スタ特①『羽の生えたうさぎ』

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*** 「あ、あのっ」  スーツとオールバックでビシッと決めた――と言っても外出時の彼はいつもこんななのでいつも通りといえばそれまでなんだけど――頼綱(よりつな)(すが)り付くようにして歩く私は、きっと(はた)から見たら、さながら大木にしがみつくコアラか何かみたいだと思う。  いや、コアラなんて可愛い生き物の代名詞みたいなのはおこがましいから、セミとかカナブンとかかもしれないっ。  いずれにしても何だかすっごく恥ずかしい。  せめてもう少しゆっくり歩いて欲しいと声を掛けたら「ああ、ごめん。早かったね」ってにっこりされた。  その笑顔に思わず見惚れてしまうとか!  くっついてると嫌でもあのいい香り――アランドロンのサムライ47とかいう香水らしいですよ!?――もしてくるし、ドキドキするしかないじゃないっ!  あー、頼綱ごときにこんな心乱されるとか!!  ホント、悔しいっ!
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