■スタ特①『羽の生えたうさぎ』

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「ほら、遠慮せず俺の腕に」  普通なら「俺の腕に」なんだろうけど、こういう変わった言い回しが違和感なく使えちゃうところが頼綱(よりつな)なんだよね、とか関係ないことを思いながら彼を見上げた。  と、またしてもすぐ腕を回してこない私に焦れたのか、繋いでいた手を無理矢理頼綱の腕に絡めるように巻きつけられてしまう。  思わず「あ、あのっ」と言ってみたものの、放すのは心許(こころもと)なく思えてしまって。  それがまた何だか頼綱の思惑通りに思えて悔しくて恥ずかしくて。 「やっぱり……」  唇を尖らせて小さくつぶやいたら、めざとく聞きつけられた。 「ん? 何かね?」  余裕の態度で私を見下ろしてくる頼綱に、私は不本意ながらもギュッとしがみついたまま言うの。 「履き慣れた靴で来れば良かった!」  そうなのよ!  ワンピースはともかくとして、馬鹿正直にパンプスまで渡されたものを履かなくてもきっと!  手持ちのローファーやバレエジュースやチャンキーヒールになったかかと低めのパンプスだって、このワンピースには合っていたはずなの!  私、何でそれ、気付けなかったんだろう!  あーん、してやられた気分ですっ!
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