■スタ特①『羽の生えたうさぎ』

20/29

2662人が本棚に入れています
本棚に追加
/703ページ
 頼綱(よりつな)はシェフお勧めのシャンパンをフルボトルで注文したみたい。  車できたはずだけど……置いて帰るのかな?  ん?  あ、代行タクシーって手もあるか。  頼綱は大人だし、そういうのもちゃんと考えてるよね? *** 「ねぇ頼綱。シャンパンって……原料ぶどう?」  店員さんがいなくなったのを見計らって小声で聞いたら、「そうだよ」ってうなずかれた。    メニューの写真を見ると、シャンメリーと見た目もほとんど大差ないようだし、ぶどうが原料ってことはお味もぶどうジュース系?  アルコールがあるだけでシャンメリーみたいだったり……する?  シャンメリー好きとしては、それに似ている――あ、シャンメリーがシャンパンに似せて作られているから逆か――シャンパンにも興味津々で。  後でにおいを嗅がせてもらおうかな?  あ、もしかしてそれってマナー違反?  そんなことを思いながらそわそわと頼綱を見つめたら「ん?」って顔を見つめられて……私は思い切って、「シャンパンのにおいを嗅いでみたいんだけど……ダメ?」って言ってみた。  頼綱はその問いに一瞬だけキョトンとした顔をして、 「恐らく花々里(かがり)の期待には答えられないと思うけど、きたらにおってみるといいよ」  そう言って、くすっと笑うの。  そんな頼綱の余裕ある態度がすごく大人に見えて、何だか悔しくて。
/703ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2662人が本棚に入れています
本棚に追加