■スタ特①『羽の生えたうさぎ』

27/29

2661人が本棚に入れています
本棚に追加
/703ページ
*** 「お店に頼んで、コースは部屋(ここ)でとらせてもらうことにしたんだ。――構わないだろう?」  頼綱(よりつな)に問いかけられて、美味しく食べられるなら、場所なんてどこでもいいです!って思った私。  ニコニコしながら「うんうん」とうなずいたら、「じゃあ、こっちにおいで」って手を差し伸べられて。  私は恐る恐るその手を握ったの。 ***  テーブルの上にはさっきレストランで見た前菜――鶏むね肉のテリーヌ――のほかに、芽キャベツやラディッシュ、ミニトマト、カブなどがふんだんに使われた野菜のマリネもあって。  その見事なっぷりに、さすがウサギ生活!とか妙に感心したりしたの。  さっき飲み損ねてしまったシャンメリーとシャンパンも、ステンレス製のシャンパンクーラーに入って、新しいボトルで届けられていた。 「花々里(かがり)、お願いだから……もうシャンパンは嗅がないでおくれね?」  私がそれに視線を注いでいるのに気付いた頼綱が、いち早くそう牽制(けんせい)してくる。  私だってまた倒れてご馳走が食べられなくなるのは懲り懲りだもの。 「同じ(てつ)は踏みません!」  美味しいものがかかっているときは特に。  心の中でそっと付け加えたら「まぁ、花々里(かがり)だもんね。ご馳走をみすみす逃すような危ない橋は2度も渡らないか」ってニヤリとするの。  くっ、悔しいけど……図星です。
/703ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2661人が本棚に入れています
本棚に追加