幽現屋(ゆうげんや)

4/4

2661人が本棚に入れています
本棚に追加
/703ページ
 まるでそう願った私の心を見透かしたみたいに、久遠(くおん)さんが言う。 「それね、すごく美味しいから是非花々里(かがり)さんに飲んでみて欲しいの。それが小瓶(この子)の望みでもあるし。……ただし――」  美味しい、と言う言葉で私の心は決まったも同然。 「いただきます」  言うが早いか、一思いにクイッと煽った。  途端、プチプチと口の中で小さく泡が弾けたのが分かった。  そのお陰かな。味自体は物凄く甘ったるかったはずなのに、全然それを感じなかったの。 「美味しい」  ほぅっと溜め息をついたのと、 「ちょっとずつ飲まないと困ったことになっちゃうの」  久遠(くおん)さんがそう言ったのとがほぼ同時だった。
/703ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2661人が本棚に入れています
本棚に追加